マルセル・デュシャン
トランクの箱(ヴァリーズ)
- 作家名
-
マルセル・デュシャン
- 制作年
-
1935-1941/1968
- 素材・技法
-
80点の複製の入っている布製箱
- サイズ
-
10.2×40.7×38.1cm
- 収蔵番号
-
DM-001
-
©Association MarcelDuchamp/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026, E6362
マルセル・デュシャンは、1935年から約5年間をかけて自身の作品撮影と複製に取り組み、約300セットの箱を制作します。写真や印刷技術の発展、機械による大量生産を時代背景にしながら、あえて精巧で旧式なコロトタイプ印刷(ステンシル着色を使った手作業の着色方法)を選びました。この試みによって、唯一無二の芸術作品と大量生産品、手作業の独創性と機械的な再現性、本物と偽物の定義や区別が曖昧な領域をつくり出しました。
デュシャンは、制作に伴う手作業を工房に委託し、彼自身は色や素材の選定やディレクションに徹することで、アーティストによる「手作業」が不可欠であるという芸術の定義を覆したのです。この「portable museum」は、いわばデュシャンの創作活動の集大成でもあり、作品の再解釈と新たな価値創出を達成しました。
1941年には豪華版が限定20セット制作され、69点の複製と共に箱の蓋の内側に付けたオリジナル作品も含まれており、革とヴェルヴェットの箱で取手や金具が取り付けられています。
本作は、標準版の約300点のシリーズの1点で、外側は深紅の革、内側は赤いリネンで仕上げられた箱で、取手や金具はついていません。それまでの標準型のシリーズは68点の複製でしたが、デュシャンによる変更で12点が追加され、80点の複製がおさめられています。
そして、箱内部に「M」の木組みと共に設置されているグレーのカードには「de ou par Marcel Ducham pou RROSE SELAVY」(マルセル・デュシャンまたはローズ・セラヴィによる)と記されています。RROSE SELAVYは、男性と女性の人格を同時にもつデュシャンのもう一つの名前です。これは、「Eros, c’estlavie」(愛欲こそが人生)からの言葉遊びですが、《Boite-en-valise》の「valise」も「SELAVY」の言葉遊びだとも考えられ、本作は「トランクの箱」であると同時に、デュシャンの「人生そのもの」が詰まった箱とも解釈できるでしょう。
マルセル・デュシャン
- 作家名
-
マルセル・デュシャン
- 制作年
-
1935-1941/1968
- 素材・技法
-
80点の複製の入っている布製箱
- サイズ
-
10.2×40.7×38.1cm
- 収蔵番号
-
DM-001
-
©Association MarcelDuchamp/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2026, E6362