増子博子

側の器より 水脈を探る手

2019
1
作家名

増子博子

制作年

2019

素材・技法

犬ガム、蝋引き糸

サイズ

約10.0×20.0×10.0

収蔵番号

MH-001

 

©︎ Hiroko Masuko

増子博子の作品には、ドローイングでも立体でも繰り返し「手」が登場します。私たちは物事を頭で考えて理解しているように思いがちですが、増子の作品は、手で感じ、手で考え、手で知るというような、手が知性と結びつき、人間の行動を方向づけていることを想像させます。触れたいから触れるのではなく、まず触れたという身体的な経験が、その感覚や欲求を生み出しているのかもしれません。
本作は犬用ガムを素材として制作されています。犬ガムは噛まれることで形が変化し、歯や唾液の痕跡を受け入れる素材です。その性質は、身体との接触によって変化し、記憶を刻み込む支持体としても見ることができます。本作の2年後、増子は《contactless treatment》(2021)という、ビニールの手の作品を制作しました。コロナ禍のブラジルで、患者に直接触れられない看護師が、お湯を入れたビニール手袋で患者の手を包んだという出来事をきっかけとした作品です。
増子にとって手を描き、つくることは、単に手の形を表すことではなく、その手がもつ感触や触覚の記憶を呼び起こす試みなのかもしれません。犬ガムという特殊な素材もまた、身体と物質が接触した痕跡を内包しています。本作は、言葉による理解に先立つ触覚的な経験へと私たちを導きながら、人を動かし、世界との関係を生み出す根源的な感覚の水脈をたどろうとしているように思われます。

増子博子

作家名

増子博子

制作年

2019

素材・技法

犬ガム、蝋引き糸

サイズ

約10.0×20.0×10.0

収蔵番号

MH-001

 

©︎ Hiroko Masuko

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