1975年に西武百貨店池袋店の12階にオープンした西武美術館の開館記念展は、「日本現代美術の展望」でした。
本展のカタログに執筆された、当館の創設者堤清二による開館の挨拶「時代精神の根據地として」は、当館が軽井沢の地に設立されたテーマとなりました。堤は美術館のあり方について「たとえば砂丘を覆う砂や、極地の荒野の上に拡がる雲海のように、たえまなく変化し、形を変え、吹き抜けた強い風の紋を残し、たなびき、足跡を打ち消してゆく新しい歩行者によって、再び新しい足跡が印されるような場所であって欲しい」と自然に例えて書いています。美術館は「絶えざる破壊的精神の所有者」によって、一度つくられた権威や保守的な心情の変化を恐れず、破壊と創造を繰り返しながら存在し、「時代のなかに生きる感性の所有者」によって動かしていくという、「今」や「未来」を見つめる眼が強く感じられます。当館は歴史的な作品の流れを捉えながら、同時代を生きる作家と共に歩み、作品を収集してきました。
「日本現代美術の展望」展には、当館でも活動を追っていくことになる、荒川修作、中西夏之、横尾忠則、宇佐美圭司、堂本尚郎、菅井汲、加納光於、若林奮なども参加していました。日本現代美術のコレクションは、荒川修作《意味のメカニズム》(c.1963/88)全127点の所蔵、若林奮の美術館庭園の基本プラン構想など、それぞれの作家と深く関わり、80年代、90年代、00年代の作家の軌跡を時代毎に追うような収集をしております。
<主な所蔵作品>
荒川修作《意味のメカニズム》127点組(c.1963-88)、《Gentle Friends》(1985)など
中西夏之《作品 – たとえば波打ち際にて》(1984)など25点
横尾忠則《戦士の夢》(1986)など13点
堂本尚郎《連続の溶解7》(1964)など13点
菅井汲《フェスティバル・マウンテン》(1975)など5点
加納光於《陶壁にて Re》(1980)など34点
宇佐美圭司《煉獄・泡の塔》(1994-97)など47点
中村一美《存在の鳥 Ⅰ》(2004-05)など18点
大竹伸朗《家系図》(1986-88)、《網膜#9》(1988-90)
鴻池朋子《ヤマナメクジと月》(2015)